接待は懇親を深める機会であると同時に、仕事の場以上に、その会社の人となりを評価される場でもある。良い接待には段取りが大事。はじめて接待の幹事を任された人はもちろん、経験値の高い人でも意外な勘違いやマナー違反をしていたかも。準備から当日気をつけたいことまで、接待の基本をQ&Aで解説する。
接待がうまくいくかは当日までの準備で決まるといってもいい。確認しなければならないことは意外に多い。さてまず、何からはじめたらいい? 順を追って準備を進めよう。
最初から最後まで、相手に気遣いをさせないで接待を終えるのが、接待上級者。気持ちよく食事と会話を楽しんでもらえるよう最善を尽くそう。
●会計は締めの食事やデザートのタイミングで、さりげなく席を外して済ませておく。
●自社でよく利用する店なら、請求書(いわゆるつけ払い)が可能な場合もある。
●ホテルや高級レストラン、料亭などでは、食事の代金のほかに、10~15%のサービス料がかかる場合がある。予算をたてる際に確認しておく。
●現金で5万円以上支払いをした場合は、領収書に収入印紙が貼付されているか確認する。うっかり忘れると後で面倒だ。
●昨今は稀になったが、個人経営の店などではクレジットカードが使えないこともある。必ず事前に確かめておこう。
●一番上の役職者から渡すのがよい。なお、手土産は来店時にお店に預けておくとよい。
●お店によっては、自店の名物などを手土産として用意しているところもある。それを用意するのも一興。
見送りは、接待を締める大事なポイント。相手を見送ってから自分たちが解散するのがマナー。今はスマホがあるとはいえ、相手の帰りの交通機関は下調べしておきたい。相手が深酔いしている場合もある。最後まで心遣いを絶やさないように。
●帰路に不案内とならないよう、駅への道順、乗り入れ路線など近隣の交通事情は調べておく。
●送迎車の用意をするのであれば事前に予約をしておく。歓送迎会シーズンや年末年始は配車に時間がかかる。
●最寄り駅のほか、大きなホテル、商業施設など界隈のタクシー乗り場をチェックしておくとよい。
●二次会に誘う場合は、帰路や終電の時間も考慮し、相手の反応をみて無理強いしないなど臨機応変に。
●相手から誘われて、なおかつ、お店も任されることも。自分からは誘う予定がなくても、いざという時に備え店のあたりをつけておくとよい。
●落ち着いた雰囲気のバーなども無難。相手の趣味や好みを事前リサーチしておくとよい。
●趣向を凝らそうとするあまり、遠方になったり、時間が遅くなったりしないように。
くれぐれも二日酔いで遅刻などしてはならない。ここまでが接待と心得、いつもより早く出勤するくらいの気持ちで。
●「昨日はお付き合いいただきありがとうございました」と御礼の連絡をする。御礼は電話か昨今はメールでもいいだろう。出勤後の朝イチがベストタイミング。
●御礼は、出来れば上司から先に連絡してもらい、次に現場担当者の順がベター。
●「○○のお話が興味深かったです」「薦めていただいたワインがおいしかったです」など具体的な感想をひと言添えると良い。
微に入り細をうがった段取りですべてが決まる接待。最上のもてなしを会得するには何より場数を踏むことが必要だろう。また、お店選びは成功の最も大きな鍵を握る。「接待」と伝えた時にきちんとしたサービスを提供してくれるお店なのかどうか。日頃から研鑽し、自分だけの「とっておきの接待のお店」を見つけておこう。レストラン検索サイト「大人のレストランガイド」は、接待や会食、フォーマルな食事会、その他幅広いビジネスシーンにもぴったりのレストラン・個室居酒屋・隠れ家レストランを探せるグルメガイド。特別な日には、活用してみたい。
監修:岩下宣子
岩下宣子(いわした のりこ) 共立女子短期大学卒業。キッコーマン入社。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流小笠原清信氏のもとでマナーを学び、1985年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業、学校、商工会議所、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆活動を行う。
著作・制作 日本経済新聞社