接待は懇親を深める機会であると同時に、仕事の場以上に、その会社の人となりを評価される場でもある。良い接待には段取りが大事。はじめて接待の幹事を任された人はもちろん、経験値の高い人でも意外な勘違いやマナー違反をしていたかも。準備から当日気をつけたいことまで、接待の基本をQ&Aで解説する。
接待がうまくいくかは当日までの準備で決まるといってもいい。確認しなければならないことは意外に多い。さてまず、何からはじめたらいい? 順を追って準備を進めよう。
日程調整から接待ははじまっている。「多忙な時間を割いてもらう」ことをしっかり心得た上で、スムーズに日程調整が行えるようにしよう。接待相手はもちろん、自社も含めた参加者について、事前の情報収集が必要だ。
●1週間前など直近の予定を聞くのは失礼。1ヵ月くらい前であれば日程の選択肢もあり、お互いが調整しやすいタイミング。ただ宴席が増える年末年始や、歓送迎会のシーズンである3~4月などはさらに早目でもいい。
●金曜日を選びがちだが、週末はプライベートの予定が入っていることも多い。目当ての店の予約がしにくいこともあり、要注意。
●お客様にお目にかかった際、日取りのメドや都合を予め聞いておく。社内調整した上で、候補日をメールで打診する。
●候補日は3、4日程度がベター。日程が確定したら、まずメールで連絡。
●場所などの連絡は後からでもかまわない。同席者の役職・名前も口頭ではなくメールで。
●スタート時間は、18時から、遅くとも19時くらいから。終業時間は会社によって異なることを忘れずに。
●子育て中の女性などは、夜の時間がとりにくい。気分転換にもなる特別なランチで接待するのもいいだろう。ただし、仕事に影響がないよう、終わりの時間も明確に伝えておくのがいいだろう。
お店選びは、接待の成否を握る重要なポイント。“相手をもてなす”という視点に立って熟慮すべし。好き嫌いやアレルギーもある。接待相手の嗜好をあらかじめたずねておくのが昨今のマナーだ。
●相手の「行きやすさ」「帰りやすさ」のアクセスの良さがまず重要。「普段どのあたりでお食事されることが多いですか?」「通勤はどの路線を使っていますか?」など確認し、最適な場所を選ぼう。たまにはいつもと違うエリアに行ってみたい、などの要望もあるかもしれない。エリアについては接待相手と対話しながら希望を聞いて、決めていくのがいいだろう。
●エリアが決まったら、予算に合わせて「接待利用が多い」「接待におすすめ」とされているお店を大人のレストランガイドで検索する。周囲の人が過去に利用したことのあるお店も参考にしよう。候補店を2、3ピックアップしたら、上司など接待の同席者にも意見を聞いて絞っていく。
●下見をしておけば、事前の打ち合わせ次第で、当日の進行がスムーズになり、お店の対応も違ってくる。
●接待利用であることをしっかり伝えた上で、打ち合わせをする。個室はあるか、実際に頼む料理の内容やサービス、料金についても確認・相談する。請求書、あるいはクレジットカードでの支払いは可能か、領収書が必要な旨なども事前に伝えておくとスムーズに。また、見落としがちなのはトイレ。よく清掃され、清潔感のあるお店は外れが少ない。
●下見はお店の人と話ができるよう、混雑時を避けてするのがいい。
●メールで、改めて日時、出席者名とともに店名、住所を連絡。わかりやすい地図や案内図のURL、電話番号の記載も忘れずに。わかりづらい場所なら「1Fに○○が置いてあるビルの3Fです」などの目印を書き添えるとより親切。
●「名物の○○をみなさんで楽しみたいと思います」など、会食を先方にも楽しみにしてもらえる言葉も添えたい。
●また予約したお店にも、接待当日の3日から1週間前には必ず、予約確認の連絡をしておく。
手土産は、大切な時間を割いてくれたお礼の気持ちを込めて渡すもの。心を尽くした一品で、もてなしを締めくくりたい。直前にあわてないように、お店選びが終わったらすぐにでも検討に入りたい。
●百貨店などに入っている有名店や、接待するお店に近い店のスイーツなどが万人に喜ばれるオーソドックスなもの。
●接待するお店によっては手土産を用意している場合もあるので、事前に要チェック。
●日持ちするものなら、1人暮らしの方にも喜んでいただける。
●無難な手土産といえば有名店のスイーツなどだが、オーソドックスすぎて印象に残らないことも。自分の出身地の名物を「○○県といえばこれ、という名品です! 一度召し上がりください」と渡したり、今話題のお店に「行列に並んで買ったのですが、楽しい経験でした」などとアピールしながらも、相手の負担にならないようさらりと伝えるのも手。相手に喜んでもらえるよう時間をかけて考えたことが伝わる手土産は、プラスアルファの印象づくりにも役立つ。手土産を遠慮された場合は、「お子様に」「奥様に」などと添えると、相手も気兼ねなく受け取りやすい。
監修:岩下宣子
岩下宣子(いわした のりこ) 共立女子短期大学卒業。キッコーマン入社。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流小笠原清信氏のもとでマナーを学び、1985年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業、学校、商工会議所、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆活動を行う。
著作・制作 日本経済新聞社